ゆるふわ日記

ゆるふわだよね。

丸山という男

 

 

 

 

僕の友人に丸山という男がいるんですが、こいつがまたひどいんですよ。何ていうか、頭がおかしいんです。気が狂ってて、完全に倫理観が崩壊してるんです。自分以外の個体の気持ちが全くわからない奴で、その時の感情でしか行動しないんです。眠いから寝る、腹が減ったから飯を食う、人を殴ると楽しいから人を殴る、ってな感じで。もし自分が人に殴られたら痛いだろうなとか嫌だろうなとか、そんなことは全く想像できないんです。動物みたいですよね(笑)。そんな奴なのに何故かもう数年付き合ってる恋人がいるんです。完全に洗脳されちゃってるんですよね。この女の胃の中には石が詰まってるんですよ。丸山が道を歩いてるときに適当に拾った石の重さが知りたいとか言って、彼女に石を食わせて、体重を計らせたらしいです。そのせいで彼女は体重が5キロくらい増えちゃったんですけど、それから腹が減らなくなったから結局ガリガリに痩せちゃって元の体重に戻ったらしいです。何せ常に胃の中に石が詰まってるわけですからね。おかしいですよね(笑)。多分この女ももうじき死ぬんですけど、実は丸山は前に付き合ってた女も殺しちゃってるんですよね。こいつはただ倫理観が崩壊してるだけじゃなくて、性癖も狂ってるんですよ。簡単に言うと、臓器を食べたがるんです(笑)。スカトロとかならまだわかるんですけどね。まあその性癖がエスカレートして、性行為中に交際相手の女の腹を裂いて腸かなんかを食いちぎったらしいです(笑)。相当苦しんで死んだらしいですよ。まあ丸山はあんな見た目ですからね、基本的に人間には嫌われるはずなんですが、定期的にちゃんと彼女を作ってくるんです。不思議ですよね。ただ殺したこの女は相当気に入ってたらしくて、死んだ後もこの女が埋まってる墓石と夜な夜なセックスしてたらしいです(笑)。本当に気味の悪い奴です。あとこいつはとにかくゲロを吐きます。自由自在にどこでもゲロを吐けるんですよ。特異体質なんです。街を歩いてて、女がいたらいきなりゲロをぶっかけるんですよ(笑)。たまったもんじゃないですよね。あんな見た目の男にですよ。これがまた臭いんです。ゲロを食ったのかみたいな匂いのゲロなんですよ。だから極力丸山と2人で行動するのは避けてますね。変な目で見られますから。高田馬場とかを歩いてる分にはまだいいんですよ。元々ゲロだらけですから。綺麗な街で吐かれたらたまったもんじゃないですよ。ゾンビみたいですからね。ひとりハロウィンです。ゲロをかけた女をみて興奮して、チンポを立ててるんですよ(笑)。あと丸山は差別が大好きなんですよ。ひどい奴でしょ。在日朝鮮人とか部落の人とかを見ると、とにかく頭ごなしに暴言を吐きまくるんですよ。そして、ゲロをかける(笑)。でも不思議なことに、そんな奴ら相手にチンポを立ててるんですよね。ひどい暴言を吐きながら、自分のゲロまみれになった日雇労働者の親父とかにチンポをしゃぶらせてたりしましたよ。これはおかしかったですね(笑)。ゴミだ虫けらだって貶してる相手にチンポしゃぶらせてる訳ですからね。あと丸山はとにかく障害者とか子どもが好きですね。多分弱い人間が好きなんです。自分より明らかに地位が下だったり、力が弱そうに見える相手にはもうあからさまに強くでるんですよ。基本は気の弱い奴なんで、僕なんかにはペコペコしてくるんですが、子ども相手になんかひどい態度ですよ。わかりやすい奴でしょ(笑)。丸山は無職なんで基本的に僕が飯を食わせてやってるから、僕には逆らわないですよ。一見合理的なんですけど、本当に動物みたいですよね。まあ弱い奴は基本的にみんな性欲の対象ですからね、子ども相手だと男の子でも女の子でも関係ないんです。とにかくゲロをかけて、無理やり犯すんですよ。多分男か女か見分けられないんでしょうね。馬鹿だから(笑)。穴が一つ以上あればいいんです。まあゴミムシダマシみたいなもんです。あと障害者が好きですね。小人症の人とか、生まれつき脚が弱くて立てない人とか、目が見えない人とか、単に知的障害者とか、とにかく弱い人間が好きなんです。好きというか、ただ性欲の対象なんでしょうね。相手が抵抗出来ないとわかると、途端に強気にでる。普段は臆病な奴なんですけどね。とにかく考え方が古いんですよ。纏足が好きな親父みたいな。タブーの化身みたいな人間です。まあこいつ自身も障害者みたいなもんなんですけどね(笑)。まあそんな性的倒錯のせいで、今の恋人ももう肘から先は無いですね。あれは酷かった。僕は会ったことがあるんですが、切られてるんですよ肘から先が。とにかく手足が短い方が好きみたいですね。まあ別に本人も気にしてる感じじゃなかったんでいいんじゃないんですかね(笑)。洗脳されてるからでしょうけど。洗脳が解けたらどうなるんでしょうかね。あ、手がない、みたいな(笑)。まあそれより先に死ぬんでしょうけど。まあとにかく差別と偏見を地で行く感じの男です。特に女性蔑視なんかひどいもんですよ。この間も高田馬場駅前の交差点で女はクソだみたいなこと言いながらそのへんの女を殴りつけて思いっきりゲロをぶっかけてましたけど、そしたらフェミニストみたいな親父が怒鳴りこんできて、もうすごい剣幕ですよ。基本的に自分より強そうな相手には弱いですから、もうペコペコするだけで、これはおかしかったですね。違うんですとか勘違いですとか言って。ゲロをぶっかけといて何が違うんですだって感じですよ(笑)。本当に丸山というのはひどい男です。膨大な性欲を暴力とゲロで発散するって感じで。大学時代は好青年みたいな雰囲気だったんですけど無職になったあたりからもう狂人になっちゃいましたね。まあ当時からかなりおかしかったんですけどね。まあ丸山という男には関わらない方がいいです。

 

 

 

 

 

誰かが詩を書いた時

 

 

 

誰かがクソみたいな詩を書いた時、それは何にもなれずにただこぼした牛乳の上やラーメン屋の通気口の前を通り過ぎて、誰かに踏みつけられたり唾をかけられたりしながら、たどり着いた先で骨になったり、あるいはならなかったりする。深夜三時頃の東京のどこかの道、ある青年が自転車を漕ぐ体力も失い、緩い上り坂を自転車を押しながら歩いていた。彼よりも少し先に、彼よりも更にゆっくりと自転車を押している怪しい男がいた。長髪でボロい服を着た怪しい男だ。青年は自転車を押しながら、ゆっくりと男を追い越していった。その時に青年は男の顔を見たりしなかった。もちろん話しかけたりもしなかった。男を追い越した後も振り向いたりはしなかった。東京の夜の、ある帰り道の、どうでもいい街灯の光や、何でもない匂いとか、代わり映えのない音が、そこにあったりなかったりした。

 

 

 

呼吸する低体温シンドローム

 

 

 

クラゲをベランダで飼うのが流行った頃、ピンクのジンジャーエールはまさにシベリア出兵のそれでした。消しゴムでつくった冬ですが、風化した夕暮れがあなたの胸の中でずっと消え続けているわけです。少女の出産にも似たラーメンスープの味が、短冊に雪を降らせていたのですよね。コンドームが破裂した音で目覚めた朝は、自殺みたいな喫茶店です。シティポップが流れる防空壕のコンビニでペリカンの民主主義が崩壊しました。地雷で足を失った金曜日がちょうど夢をみていた頃ですね。亀の背中に乗っても駅中キヨスクに爆弾は落ちませんし、ベルリンの壁が発酵しません。友情より大事な光の反射が、深夜の高速道路に渦を巻いて気絶していたんです。マクドナルドのウイスキー茶漬けじゃ全然酔えない夜に、ルワンダで人が何人死んだって冷凍庫で新聞紙は冷やさないって。雪だるまにチューブバターかけてもあなたがそこにいてくれるなら赤いコンテナでうさぎもろとも運んであげます。毒りんごが野菜じゃないならわたしは太陽系にいちゃいけません。肝臓のおとぎ話が荻窪で爆発したらしいです。トタンはせんべいを食べないし、春に夕暮れはきません。線香花火を打ち上げて、首吊ったまま生きていきます。低体温の夜の向こう側で、アスファルトがサーカス食べました。キッチンの生首畑では、明日もどうせ触れません。抉れた月に雪が積もって、眠れぬ夜が再生され続けるんです。

 

 

 

冬になるから

 

 

 

酔っ払って家に帰ったとき、寝ている赤ん坊をあやしていたら床に落として殺してしまったのを思い出すと今でも笑いが止まらない。それから何故か家を追い出され路上生活になったが常に悪霊が耳元で殺せ殺せと囁いてくる。誰でもいいからひたすら殺せと。雪の降る東京で一人残らず殺したい。理由は何だっていい。雪だから。冬だから。寒いから。とにかく誰かを殺さなきゃいけない。何処だっていい。誰だっていい。郊外の別荘で過ごす老夫婦も殺したい。昼間から裸でセックスに耽る新婚夫婦も殺したい。銃がない。だから傘とかでいい。傘の先端でひたすら眼球を突きたい。そう、雪だから。冬だから仕方ない。傘がなきゃどうしようもない。だから殺さなきゃいけない。傘を持たなきゃいけないなら仕方ない。胸を開いて肋骨も開いて肉とかレバーとかを取り出して食べたい。どんなに幸せな人間も、どんなに成功している人間も、この手で刺せば人生なんてすぐ終わる。突然終わる。知らないホームレスに刺されて急に終わる。いままでどんなに努力してきたとしても、どんなに苦労してきたとしても、気まぐれに俺がこの傘で刺せば人生なんて一瞬で終わる。どんなに人を見下している奴も、どんなに優しい奴も、簡単に死ぬ。みんな死ぬ。どうせ死ぬ。馬鹿馬鹿しい。雪だし。冬だから死ぬ。だから殺す。冬だから。殺す理由はなんだっていい。ただ生きる理由なんか何ひとつない。生きる意味もない。そんなものがあると思っている奴はただの低知能だ。実に馬鹿馬鹿しい。殺せ殺せと囁いてくる。ひたすら殺したい。殺さなきゃいけない。雪が降るなら傘が必要だから。それなら仕方ない。傘で眼球を突き刺せばどいつもこいつも死ぬ。殺すしかない。冬になるから。

 

 

 

だいすきなひとがいますよ

きこえますか?わるいやつらにこいをじゃまされていますよ?こいのなやみがありますよ?だいすきなひとがいますけどわるいやつらからのこうしゅうはぱるすでんぱにじゃまされておもいがとどきませんよ??でもせんせいびょうきはなおりましたよにんげんがもっているしぜんちゆりょくのちからであたまのわるいびょうきもなおりましたよ?おくすりはいりませんよ?だいすきなひとがいますけどわるいやつらのわるいでんぱのせいでとどきませんよ?あたまのなかをすべてわるいやつらにみられていますよ。さとられていますびょううきはなおりましたのになぜですか?わるいやつらはどうしていやがらせをしてきますか?いやがらせがまいにちひどくなっていますよ?ふかいなおとをだしてきますよ?ぼうがいでんぱですよ。となりのへやにずっといますよ。わたしのあたまのなかをのぞいていますよ?となりのへやでずっとそうじきをかけていますよ?とてもうるさいですよ?きみのわるいわらいごえもきこえてきますよ?わたしをわらっていますよ?どうしていやがらせするですか?せいしんかにつれてかれてくすりずけにされましたよ?せいしんかのやつらはわるいやつらですよ?でもしぜんちゆりょくのちからでびょうきはかんちしましたよ?でもみんなわたしのわるぐちをいっていますよ?わたしがねているときわたひのへやにはいってきてわたしのねがおをみてわらっていますよ?だいすきなひとはとてもかわいいですからだいすきなひととけっこんしたいですけどじゃまされますよ?わたしはびょうきはなおりましたのでもうだいじょうぶですよ?わるいやつらをたおすだけですよ?はーぶのちからのしぜんちゆりょくでびょうきはなおりましたよ?びょうきはなおりましたのでだいすきなひととけっこんしたいですよ?おまじないをかけていますよ?でもわるいでんぱにじゃまされますよ?たいほしてもらえませんか?やつらしけいですよ?だいすきなひとはとてもえがおがすてきですよ?とてもかわいいですよ?わたしのおよめさんになりますよ?でもわるいやつらのせいでとどきませんよ?とてもかわいいですわたしのおよめさんになるですよ?とてもだいすきですよ?かわいいですよ?おまじないもかけてはーぶのしぜんちゆりょくでたたかっていますよ?わるいやつらがわたしをころそうとけいかくしていますよ?だいすきなひとはわるくないですよ?わたしとけっこんしますよ?もうすぐくりすますですからだいすきなひととてをつなぎたいですよ?だいすきなひとにおもいをつたえていますがわるいこうしゅうはぱるすでんぱにじゃまされていますよ?でもだいすきなひとはとてもかわいいですよ?だいすきなひとはえがおがとてもすてきですよ?こんなにすきなのにどうしてつたわらないですか?

メロンソ

 

 

 

知らない男に処女を捧げよ。女は暴力で黙らせろ。弱い奴から搾取しろ。約束なんか守るな。刃物で殺害しろ。アイドルたちが歌っていた曲の歌詞はそんな感じだった。コンサートのクライマックスではメンバー同士が殺し合いをしていた。観客たちは殺せ、ばらせ、殺っちまえと合いの手をいれる。アイドルたちは歌いながら殴り合い、踊りながら血を流した。生き残った女の子はナイフを隠し持っていた。血まみれの歯を見せてニヤりと笑うとそんなショーは終わった。僕は臆病だからいつだって青空のひろがりと、人々の雑踏の中に身を置きたい。生ぬるい虚無の中、他人の幸福をぼんやりと妬みながら生きていきたい。その日、夜明けしかこなかった。真夏の夜明けだけが何度も何度も繰り返された。夜明けバカヤロウと思いながら電信柱をのぼり白い紙を細かくちぎって撒いた。完全に雪だった。僕は電線を琴にしてクリスマス・ソングを奏でた。その音色は遠い遠い国まで届いた。真夏の夜明けに僕だけがクリスマス。どうしようもなくなって僕は電信柱から電波を飛ばして好きな女を呼んだ。ずっと好きな女だ。僕は臆病者なのでビール瓶で殴ることは出来なかった。だからワイングラスを投げつけた。彼女の顔は頬にひとつだけ切り傷がついて、ワインでベトベトになった。昔のおとぎ話に電信柱が出てこない。カメとかしか出てこない。また空虚の中、電信柱の上から日の出を眺めた。生卵と涙が似ているという理由から、彼女は泣く演技をする時いつも生卵を顔に打ち付ける。僕が白ワインだと思ってずっと飲んでいたのは、うっすいメロンソーダだった。殺せ、ばらせ、殺っちまえ。殺害しろ。暴力で黙らせろ。そんな言葉が頭の中でずっとぐるぐる回っていた。でも臆病な僕はひたすらワイングラスを投げつけることしかできなかった。彼女は泣いたフリして生卵をいくつも額で割った。彼女の顔はメロンソーダと生卵と血液でベトベトになってすごい臭かった。

 

 

動物園へようこそ

 

 

 

 ある日森の中、くまさんに出会った。そうして私は死んだ。しかも不幸になった。上空から核爆弾が落ちてきてすごく痛い。木々に括りつられた無数の葉に遮られ縁ができていても、どこまでも続いていることが一目でわかるほど青い空に、大きなキノコ雲が打ち上げられた。世界は火の海だ。白いワンピースが遠くにみえる。死にながら私は、全く知らない人物を思い出していた。彼はコーヒーを一口だけ飲んであとはグラスごと捨てるようなぶっきらぼうな男であり、ペットの犬とのセックスが日課となっている。黒くて大きなその犬は口で筆を噛んで絵をかけるほど器用であった。それ故、河川敷の浮浪者を殺した後、ステーキや、血のスープ、内臓で出汁をとって髪を漬けたラーメンなど、まるで高級ホテルのフレンチディナーのような料理をいくつもつくることができる。犬は浮浪者ディナーを用意すると、男から新鮮な浮浪者の骨を与えられるため、喜んで毎日彼らを殺していた。雨の日も、嵐の日も。男の家は慢性的に死臭が漂い、育てていた野菜も枯れてしまっていた。朝めざめる度に、不快な気分になる。真っ黒にふやけた葉や、黴だらけの根菜。男は腐った野菜を皿に盛り付けながら泣き喚く。俺が夢みたのは、こんな場所じゃない。夢みたのは、一面カラフルな花が咲き、季節ごとに新鮮な野菜が採れ、それが地平線の彼方まで続く幻想的な庭だ。今や浮浪者の死体の山。蝿が集り、野良犬や野良猫、タヌキ、トナカイ、キリン、ゾウ、見たことのない動物たちも集まってくる。俺の夢みたお花畑は、もはや夢の中にすらない。ノコギリを持って、動物たちの首を片っ端から切り落としていった。大切にしていた愛犬もオスだと気付いたので頭部を吹き飛ばした。しかしその日から、浮浪者ディナーが提供されることはなくなってしまったのだ。頬が落ちるほど甘い肉に、喉に粘りつく血液や、噛みごたえのある髪……。たまらなく浮浪者が恋しくなって、自ら河川敷へ狩りに出掛けることにした。街はどこもゴミの山。絶望的な風景が続く。いきなり殴ると殴り返してくるような教養のない人間だらけだ。河川敷、そこにはゴミを漁って生きている醜い姿の人間たちがかろうじて生きている。溢れ出す涎を飲み込むと、浮浪者たちは一斉にこちらを睨みつけた。男がホームレスイーターだということに気が付いたのだろうか。こちらも時代劇の主人公さながらの形相で睨み返す。浮浪者どもが怯んだその隙に、殴りかかった。ガイコツのように痩せ細り、綿アメ並の骨密度のこいつらに、俺の腰の入ったパンチは致命的だろう。しかし束の間、鋭く尖ったものが、一斉に体に突き刺さる。浮浪者たちの爪は長く伸びきっていて、先端は細く研がれていたのだ。感動的な、野生の知恵。こいつらには勝てない。狼の群れに飛び込んだ羊の気分だった。羊は最後の力を振り絞り全力で逃げ出した。しかしただでは帰らない。逃げる際にたまたま見つけた赤ん坊を、ひったくってきたのだ。これでまた、人間の肉を食える。赤ん坊を大事に抱え走り続ける。足を引き摺りながら追いかけてくる死に損ないたちは、さながらゾンビのようだ。ゾンビはそこら中から湧き出してきて街を徘徊する。俺は腐乱死体を蹴り飛ばしながら、なんとか知らない家に飛び込んだ。ここなら安全だ。溢れ出した涎を飲み込むことすらせず、赤ん坊に齧りつく。そして歯で肉を切り裂こうとする。しかし、浮浪者の赤ん坊は綺麗に舐め取られたフライドチキンの様に、ガリガリに痩せ細っていた。とても食える部分などないのだ。その瞬間、全てを悟り絶望した。あの犬は、浮浪者などではなく健康な人間を殺して調理してくれていたのだ。涙が止まらない。俺は孤独だ。もう何もない。残されたのは腐った野菜と枯れた花だらけの広大な庭だけ。自分ひとりでは、生きていくことすらできない。死を決意した。ストーブのそばにあった灯油を頭からかぶり、持っていたライターで火を付けた。たちまち誰かの家は炎に包まれた。燃え盛る家にはまた別の男がいた。彼は自慰をしていた。いや、自慰をせざるを得なくなったのだ。彼は模範的な泥棒であった。泥棒だが一般的な自己中心的で迷惑な泥棒と違い、良心的な泥棒なのである。適当な家に忍び込み、家中を完璧に掃除する。その報酬として見つけた金をありったけ持って帰るのだ。誰にも迷惑をかけない上に、人の幸福に直結する素晴らしい仕事だ。彼はこの仕事に日頃からやりがいを感じていた。俺は世界を救う、ヒーローだ。出会った女、全員に性交を申し入れる。しかしほとんどの場合断られる。それもそのはず、彼は常にドブの銭湯に浸かったような悪臭を放ち続けているのだ。その匂いは強烈で、ゴミ溜めに集るハエやカラスですら即死し、ゾウやキリンも失神する。彼の性交を受け容れるのは、死体か、壁の穴。彼は忍び込んだ家をいつも通り廃墟へと変えていった。自分では掃除しているつもりでも、彼が一度でも歩いた家はとても人間が住める環境ではなくなる。そこへ扉の開く音が聞こえ、次に男女の話し声が聞こえてきた。彼らがこれからセックスを開始することはすぐにわかった。彼は怒張させながらわざわざ寝室まで移動してからたまたまそこに居合わせただけの泥棒のふりをしてクローゼットに潜り込んだ。男女はやはり寝室に入ってきてくだらない俗談をしながらベッドに入り込む。囁くような会話が途切れ、暫くすると女の深い息遣いが聞こえてくる。クローゼットの扉に耳を寄せ、暗闇の中でその声を必死に聞く。殺人級の悪臭でも、肉欲には勝てないのだ。やがて女の呼吸は喘ぎ声に変わり、ベッドも軋みはじめる。当然、クローゼットの中は既に精液まみれだ。女の喘ぎ声はやがて絶叫へと変わり、更に呻き声へと変わった。映画に出てくるゾンビのような呻き声だ。ようやく女の呻き声が静かになると、だんだんと息をするのが苦しくなる。耐えられなくなりクローゼットの扉を勢いよく開けると、そこに男の姿はなかった。そこにあったのは炎に包まれた部屋と食い散らかされた女の死骸だけだ。乳房は食い千切られ、腹は裂かれ、内臓が飛び出していた。頭もぱっくりと割れ、そこにはストローが刺さっていた。ベッドは血にまみれ、腕や首からは新鮮な血液が流れだしていた。ああ、たとえ死体でも、誰かの食いかけであっても、女であることに変わりはない。慌てて服を脱いで食べ残しにかぶりつく。俺は幸せだ。女を抱きながら、炎の中で死ねるなんて。今日はクリスマスの前夜だ。そんなことをふと思い出した。死ぬことをやめて、喉まで続く臓器を無理やり掻き出して首に巻いた。炎は街を焼き尽くしてゆく。窓を突き破り、猫を百億匹殺しても死刑にならない世界を駆け抜けた!
 森を焼くのが好きだった。寒い森も、焼けばあたたかい。釣りをするのも好きだった。川に毒を大量に流し、浮いてきた魚を捕まえる。大自然の中で汗を流すのは、本当に気持ちが良い。捕まえた魚はしっかり川に戻す。キャッチアンドリリース。美しい響きだ。川のせせらぎに包まれて、目が覚めると森の中だった。白い花があちこちに咲いている。そこら中に転がる死体への手向けのように。川の浅いところに巨大なクジラの死骸が散々打ち上がっている。清々しい気分だ。ロープで縛られた裸の少女を解放してやる。さあ、旅立ちなさい、世界はどこまでも続いていますよ。森の中にポツンとある小屋が僕の家だ。趣味の悪い牡鹿の生首が玄関に括りつけてある。僕は自分の家に入る度に胃の中身を全て吐き出してしまうのだ。さて世界では、毎日クリスマスが繰り返されている。とてもハッピーな季節なのだ。毎晩ケーキ。毎晩シャンパン。トナカイが夜空を飛び交う。街に小さな家を建てて、家族でゆっくり過ごすんだ。お嫁さんと、子どもがふたりくらい。でっかい犬も飼おう。そんな夢を毎日みている。そのためには、社会に貢献し金を稼がねばならない。僕は総理大臣になることを決意した。そして総理大臣になった。まず世界中の老婆を殺処分。爆弾をいくつか投下。仕事は終わり、幸せな家庭を作り上げた。笑いの絶えない幸福な場所だ。娘がひとり。そろそろ初潮だろうか。でかい犬もいる。綺麗な嫁も、死んではいるようだが毎日一緒だ。ひたすら窓からワイン入りワイングラスを投げ捨てる日々だ。通行人の頭の裂け目からは、モダンな葡萄酒色の血液が流れ出る。娘は白いワンピースのよく似合う美しい少女だ。そのころの僕と言ったら、処女強姦のことしか頭になかった。僕は娘を心から愛している。透き通る瞳に真白な肌。膨らむ前の胸や穢れなき唇。それになにより処女である。ああ僕の、愛する娘よ、永遠に処女のままでいておくれ。そう囁きながら、娘を強姦した。初潮前なのに、血がべっとりと付着していた。眼球をふたつ取り出して食べた。全身が血まみれになるまで少女を犯し続けた。美しい少女よ。ここからお逃げなさい。このままでは、穢れてしまうから。娘は立ち上がり、壁伝いに扉を探す。しかし扉の前には画鋲が千個敷き詰めてあるので絶叫とともに少女は転げ回る。やっとの思いで窓を見つけると、渾身の力で頭をぶつけ、二階の窓を突き破り下に落ちていった。墜落である。素晴らしい。それでも少女は立ち上がる。裸足で土を踏み、冷たいコンクリートを踏み、クリスマスで狂乱する街を、燃え盛る街を駆け抜ける。壁にぶつかりながら、石につまずきながら、暗闇の世界を駆け抜ける。ああ美しい少女よ、穢れなき少女よ。いつまでも、どこまでも……。その姿を目に焼き付けるために、窓から飛び降りた。しかしそこには、決して有り得てはならない光景が広がっていた。少女の白いワンピースは、もうすっかり紅色に染まっていたのだ。激昂し、絶叫した。頭が爆発しそうだ。炎に包まれる街を駆け抜ける少女のワンピースは、真白でなければならないだろう。紅色のワンピースだ。これを誰が許せるだろう。処女ではない。そう確信した。彼女は、処女ではない。僕は女を追いかけた。紅い女だ。かつての透明色の少女は、もういない。僕が彼女の肩に手をかけたとたん、高い声で叫んだ。街中に響きわたるような声で。窓を開けてピアノを弾いている遠くの誰かに、それは歌声に聞こえるだろう。手を取り、走った。街を抜け、誰もいない森の中へと。白い森の中へと。
 ピンク色のゾウが躍る。ここは天国。もうすっかり調子がいいの。妖艶なコンクリート。淫乱な電柱。発火する市街。発光する死体。トナカイが空を飛ぶ。私も飛べるの。壁が妊娠し、緑色のイルカが飛び跳ねる。ナスもトマトも爆発し、世界をカラフルに染め上げる。マグロが空を飛び、モグラが降り注ぐ。皆、首はない。首はない。一面極彩色のお花畑。犬が沈没し、猫が暴落する。おいしそうな匂いのする鳥の声。真っ青な牛の糞の匂い。色とりどりな幾何学模様。回り回って目まぐるしい。赤、緑、黄色、歪む花畑。ああ、街は燃え上がる。もし、もし明日になったら、雨も降るでしょう。ペンギンが溶け、シマウマが煮える。サイが始まり、クジャクが終わる。わあ、実物大の模型になった街は、散々消えても、消え尽きない。先生、私、もう大丈夫。ビロードのプレゼント。靴下へありがとう。空き缶が繁殖し、新聞紙が暴発する。パジャマを焚いて、腕を切る。キリンの首を微塵切り。トラの頭が高速で射出されたの。ワニの群れは凄まじい暴風雨。悪夢じゃない。素敵な夢よ。カバは膨張し、カラスは破裂。オウムの様に真っ赤な風船の欠片が弾け飛ぶ。イカが焼かれて売られちゃう。タコがへばりついてくる。あらクラゲは、もう零れない。もし明日になったら、雪も降るでしょう。あら鏡の中にパンダさん、いらっしゃい。今日は素敵なクリスマス。街中ひっくり返して大騒ぎ。お月様も掴める距離まで下りてくる。サンタクロースは首に真っ赤なヘビを巻いて。ウサギが開いて、リスが割れる。ヒツジもどうやら困り顔。ニワトリはずっと不幸。あちこちで綺麗な花火。お線香たくさん焚いてお祝い。遠くでお星さまが点滅。ロバが軋んでコアラが燻ってシカが煙ってアシカが凍る。ブタが咲いてゴリラが萎れてワシが救ってラクダが聳える。大きな大きなイチゴケーキ。シャンパンで乾杯しましょう。ケーキの上の蝋燭の炎を、一息で消して真っ暗。あらみなさん、タバコかしら。灰皿なら、私です。
 口から煙を吐き出す。私は誰なのだろう。顔も名前もない。口はないのに、口から煙は出る。白い森。白い花しか咲かないこの森に、名付けの少女がいると聞いてやってきた。動物の生首がいくつも吊り下げられた気味の悪い小屋。壁にはポルノポスターの代わりに人間の皮が貼り付けられている。タバコの煙と火薬の匂いが充満。血の海に臓器が泳ぐ。巨大な鍋では人間の死体が煮込まれている。少女はいない。いるのは全身が黒い毛皮に覆われ、鋭い牙が剥き出しになった大きなクマだけ。私は小屋を燃やして首を吊った。木の枝から紐を垂らして燃える小屋をみていた。白い森に赤い花がひとつ咲いたみたいだ。木々の隙間から北斗七星がみえる。あの星のひとつひとつにも名前があるのに私は。遠のく意識の中で全く知らない少女を思い出す。白いワンピースの少女だ。残像が蘇る。お逃げなさい。かすかにそう聞こえる。ここから早くお逃げなさい。死にながら私は白い花がどこまでも咲いている森を歩いていた。また炎が広がって、飛び火する。どんなに燃えても燃え尽きることはない。炎はどこへでも移り、報われない者たちを焼いてゆく。
 目が覚めると燃え盛る森の前にいた。もはやそれは巨大なひとつの炎だった。あのクマが助けてくれたのだろうか。街は相変わらずゴミの山。腐乱死体があらゆる場所に転がっている。首のない動物たちが街を闊歩。炎は留まることなく広がり続ける。今日はクリスマス。大きなケーキに、シャンパンで乾杯! クッキーを焼いて、靴下を吊るす。モミの木を飾りつけて、放火。森の中でクマと踊るの。メリークリスマス! メリークリスマス!
 ラララ ラララララ
 ラララ ラララララ
 ラララ ラララララ
 ラララ ラララララ
 ラララ ラララララ
 ラララ ラララララ
 ラララ ラララララ
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 ラララ ラララララ
 ラララ ラララララ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

大好きなあの子におやすみを言いたい

 

 

 

家でひたすら酒を飲み続けていると、窓の外からピアノの音が聞こえてきた。聞いたことのあるような旋律。鼻歌をのせたくなるようなメロディ。鍵盤を押す繊細な動き。細くて白くて、それでいて力強い指の動きまで頭の中に浮かんでくる。私は一升瓶を片手に持ったまま、誘われるように窓の外へ出た。すると眼下に美しい女性がいた。私はすぐさま発情した後、射精。一年後、めでたく出産。幸せな家庭を築き、幸福な日々を過ごしていた。毎日毎日ダラダラと生きる。部屋にいる知らない女を殴り続ける。ひたすら錠剤を砕いて吸引する。と、窓の外からピアノの旋律が聞こえてくる。美しい音色だ。私はどうしようもなく楽器を演奏したくなり、ハンマーを手にした。ベランダから飛び降り、知らない女を殴りつける。すぐさま響き渡る叫び声。これを録音し、一躍トップアーティストになった。長い下積み時代。支えてくれたのはいつも家族の存在だった。収入がなくとも夢を追わせてくれる妻。マネキンの娘。死んだ息子。思えば、私に家族などいなかった。私は気が付くと惨めなホームレスになっていた。非力なホームレスだ。女の爪を剥がすことすらできない。しかし、赤ん坊を殺すことはできた。私は商店街を歩く女が押している乳母車を全力で蹴飛ばした。すると乳児が転がり出たので助走をつけて踏みつけた。刹那、響き渡る歓声。拍手喝采の嵐。絶叫のオーケストラ。目が覚めると私は暗く生臭い独房の中にいた。鉄格子で遮られた小さな窓の外からピアノの音が延々と流れ込んでくる。不協和音のみで完成された絶望的な音色だ。常に吐き気を催し、ゲロを吐き続けた。孤独に包み込まれ、不安が途切れることはない。全身が痒く、手足は常に痺れている。私は不幸だ。私が一体何をしたと言うのか。悲しみの淵、私は幸せとは何かを考えていた。幸せとは、幸せとは、

きょうあったこと

 

 

きょうはこうえんに行きました。あんまりおぼえてないけどさむかったです。おじいさんがいました。おじいさんなのでもうすぐ死ぬと思ったのでかわいそうだなあと思いました。アリさんをたくさんつぶしてあそびました。楽しかったです。バッタをペットボトルに入れてふりまわしてもあそびました。なおちゃんやりょうちゃんと石をなげてもあそびました。やきゅうがへたなのでぼくにたくさんあたりました。なおちゃんはぼくのじてんしゃにのってかえりました。きょうもだれかにみられていました。きのうもきょうもだれかにおいかけられています。とてもこわいのでけいさつにそうだんしました。でもけいさつのおにいさんはびょういんに行けといいました。ぼくはひざをすりむいていたけどいえでおくすりをぬればなおると思ったけどふしぎだと思いました。ぼくはなんでびょういんいにいくのかはふしぎだと思いましたけどあたまから血がでていたのでいたかったのでびょういんに行きました。せんせいはあたまのびょういんに行けといいましたけどあたまのおくすりをもらったけどふしぎだと思いました。ぼくはがっこうにいきたいけどだめだといいました。ままはぼくをあまりがっこうや外につれていきません。ままはあまりぼくといっしょにいるところがほかのひとがみるのがいやだと言いました。ぱぱはおしごとをがんばっているのでずっとかえってきません。まどに石があたってきてとてもうるさかったです。まどをあけるとなおちゃんやりょうちゃんが石をなげていました。ぼくは21さいになりましたがともだちがいっぱいいて楽しかったです。

メリーゴーラウンド

 

 

 

 

 

今日の夢での魔術では、雪灯籠がそこら中。月明かりに突き当たり、月夜烏もお祭り騒ぎ。夜顔夕顔夜会草、森羅万象雪の下。鎧を纏った雪解けの、革命家の群れが燃え盛る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

二月二十八日のこと、私は、もしくは彼女は、堕落したマルセイエーズと朽ち果てた讚美歌をうたい、かわいいお洋服に火をつけて、警察官を撃ちながら、ガラスを割ってお買い物。盗んだものを両手いっぱいに。グランドピアノは重くって、だから燃やしてバラードを弾いたの。歌わない小鳥は殺してしまえと、言ったのはきっとお父さん。二月二十九日のこと、死者の船では、腐った骸骨から血が流れるの不思議。私は柱に釘付けされて、そのまま大洋に流れて。あなたは寒いと微笑んで、それに水も冷たくて、でも海よりも大きな希望が、どこかにきっと、ないかもね。二月三十日のこと、排水口に血は流れ、道端には少女が吊られてる。悲しくて、氷のように冷たく、指先で弾くとポロポロ零れ落ちる。冬休みが終わらなくって私ちょっと退屈。春を待ってる。窓の外を眺めながら。雪の上に書いた文字も、雪がまた消すの。濡れてうつむくスカートの裾。消え続ける人々。二月三十一日のこと、これまでの日々の走馬灯。血に染められた雪原と、走る機関車の模型。晴れたら呼吸しよう。もしも二月が終わったら、私たちは何処へゆくのだろう。ピクニックでもしようか、メリーゴーラウンドを探そうか。二月三十二日のこと、どうしても目を塞いでしまう。春も、昼も遅すぎる。私は誰を想っているの。私は誰なの。元気な犬の声が聞こえてくるまでパズルでもして過ごそうか。真っ黒なピースが散り散りになっている。いつまでこんなところにいるのだろう。音もなく落ちる雪は、窓の外にあるのかもしれないし、ないのかもしれない。目を塞いでばかりで、血液と爛れた死体と永遠に訪れない春と人殺し。首吊り。嫌だよねこんなの。

ロウバ・ボクサツ・ボーイズ

 

 

雪が降っていたので老婆を撲殺した。ところで、コンビニに美しい女性がいた。しかし、全く関わることはなく私はそのまま死んでいった……

 

───第二章───

死んでから、壁の穴が恋人になった。ある日、通行人に唾を吐き続けていると、突然ヤバくなって死んだ。せせらぐ川の上に雪片が落ちて消えてゆく様子をずっと眺めている。雪が落ちてくる。全てを白に塗り替えながら、どこにでも落ちてくる。誰も雪から逃れることはできない。故に、老婆を撲殺した。明くる日、線路の上に散らばった肉片を拾い集めて肉屋に売りつけていると、老婆を撲殺してしまった。私は胸を躍らせながら店をオープンした。心機一転、この店を大きくして地域住民に貢献し、大金持ちになるぞ。老婆を切り刻んで肉片を店で売ったが悪臭が酷すぎて店は潰れた。絶望の淵。パイロットになった。大型旅客機に客を千人のせて、適当にでかいビルに突っ込んで死んだ。雪は降り続く。粉々になった肉片の上にも雪は積もり、全てを消し去った。意気揚々と街へと繰り出したが、視界に老婆が入った。あまりに醜く、胃の中身を全て放出してしまう。老婆、撲殺。悲しくなって自殺してしまった。明くる日、ゴミを漁りながら有り得ない量のゲロを吐いていると、空に虹が架かった。さて、高級ホテルのバイキングディナーに潜入。全裸になって排泄する。ホテルの上にも雪は降る。何もかも消し去ってくれる。散歩する犬の毛先も、ほんのり白くなる。犬の首を切断する。雪が降っている。当然、老婆を撲殺する。真白な雪の上に老婆の血液で色を添えるのだ。しかしその上にも雪は積もる。どんなアートも消し去る。やっと架かった虹も掻き消す。その度に私は、老婆を撲殺。冷たい空気が霜焼けに沁みる。老婆の腹を切り裂いて、手を突っ込む。後、街中を放火して回った。燃え盛る街。老婆だけが逃げ遅れ、死んでゆく。老婆だけが死ぬ。火の上に落ちようとする雪片は、空中でふっと消えてしまう。私は怒り狂った。老婆を撲殺して雪の上に絵を描かなければ。空の上まで届く、美しい絵を。しかし老婆は既に絶滅していた。私は悲しくなって死んだ。コンビニに美しい女性がいた。しかし、全く関わることはなく私はそのまま死んでいった……

 

───第三章───

釣りをしようとしたが街は凍っていた。私は発狂してビルの屋上から飛び降りて死んだ。なるべく高いところから落ちて消えてゆきたいだけであったのだ……

腐ったアイスクリーム

 

本日五度目の朝飯を食いながら窓の外に中指を立てていると、ランドセルを背負った少女が右端からフレーム・インしてきた。同じ少女が左端から右端へと流れてゆくのを二度目の朝食の時に見ていたので、少女がゆっくりと往復、ないし単振動をしているということがわかった。永遠にだ。彼女は永遠に窓の外にある道路を単振動している。私はテーブルの上にあった皿や、皿の上にあった食パン、食パンの上にあったマーガリン、マーガリンの上にあった雲、雲の上にあった木星木星の上にあった星空などを全てゴミ箱に捨て、首を吊った。壁にカレンダーが掛かっているのが見えた。今日は2017年13月615108日だ。そうだ日記をつけよう。私は死にながら、その日にあったことを思い出していた。ある日、緑茶で爪を研いでいると、コロンビアの娼婦が本初子午線をプレゼントしてくれた。綿棒でそれを蹴っていると赤ん坊が紅葉しヤモリが暴落した。彼女は学校に向かいながら陣痛を起こした。コンクリートが溶けるほど暑い夏の日のことだ。彼女は慌ててスプーンを折り曲げると、飲み込んだ。どんな赤ちゃんが生まれるのか、楽しみだな、と言いながら通行人は通行し、欧米人は欧米した。船は船着場を出た。夜が更けた。彼女は船から植木鉢を毎秒落とし続けた。やがて出産したものを、ナイフとフォークで丁寧に切り分け、釣り針の先に括りつけた。彼はタバコを吸いながら、海の中を旅している。それからサメに食べられ、死んだ。俺は諦めきれない。絶対にこの会社を成功させ、億万長者になってやる。早速俺は資金集めのために空き缶を拾い、街頭で演説した。それから株を育て、老婆に投げ続けた。医者にはすぐに治ると言われた。スカートが揺れ、波が押し寄せた。クジラが千頭打ち上がり、月が赤く光った。妊娠検査薬を脇の間に挟み、朝を待った。どこかの知らない誰かが必死に爪楊枝を立てる練習をし、瓶に火薬を詰めている。電光掲示板の光が消え、黒い雨が絶え間なく降り続く。それは夢の中にいる彼女の白いワンピースだろうか。

理想の彼女

 

 

彼女はステンドグラスを通った色とりどりの光を全身に浴びながらステンドグラスの破片を全身に浴びた。彼女は死んだが、彼女の死を誰も悲しまなかった。彼女はファミレスに大型犬の死体を持ち込んだ日から精神科に通わされていた。彼女は日頃から全身にマーガリンを塗っていたため、野良犬や野良猫、ハトや千種の虫たちがいつも彼女の周りに集っていた。しかし彼女の体に少しでも舌を接触させると、そのあまりの不潔さにどんな大型犬やアフリカゾウも忽ち死んでいった。九つ目の精神科から追い出された日、彼女は完全に孤立した。そのあまりの悪臭から、彼女の家より半径一キロメートル以内は避難区域に指定された。彼女への生活保護は途絶え、水道、ガス、電気も全て止められてしまった。新聞配達員の若者もヤクルト売りの中年女性も彼女の家に辿り着くことは出来なくなった。彼女が百メートル以内にいると、人間はあまりの悪臭によって一秒以内に死亡し、灰になってしまうのだ。彼女の放つ臭いは牛と豚千頭分の死体と新鮮な生魚と生ゴミと全世界に生息する馬の十年分の糞を一度に同じゴミ収集車の中に詰め込んだようなものだった。人々は彼女を恐れ、世界規模のニュースになった。自衛隊や米軍も彼女の前には無力であった。上空から攻撃しようとするも、彼女の真上に差し掛かる前にどんな戦闘機も墜落した。世界中の軍艦が日本の近海へ集っていたが何もできなかった。彼女の悪臭は日に日に酷くなった。北関東全域が腐敗し立ち入ることができなくなり、二百万人の人間が死んだ。そしてその範囲はついに首都圏にも差し掛かろうとしていた。国際会議が開かれすぐに決断が下された。米国最大の核爆弾を彼女の家に落とすというものだ。国民も大多数がこれに賛成した。反対しているのは脳の腐った老人だけだ。政府は核を落とすことに反対した老人を片っ端から処刑した。そしてついに決行の日となった。全日本国民が心から待ち侘びた日だ。核が落ちる様子は全国でテレビ中継されることになり、誰もがテレビの前で日の丸の旗を振った。中には涙を流しながら喜ぶ者もいた。カウントダウンが始まった。街はお祭り騒ぎだ。大人も子どもも朝から酒を飲み、シャブを打った。世界中の人間が夢に見た幸せがもうすぐ訪れる。眩しいほどの青空に見事なキノコ雲があがった。それから爆風が世界中を駆け抜けた。人間はひとり残らず死んだ。日本列島は沈没し、他の国も一面焼け野原になった。誰もが夢見た理想の世界だ。彼女はステンドグラスを通った色とりどりの光を全身に浴びながらステンドグラスの破片を全身に浴びた。彼女は死んだが、彼女の死を誰も悲しまなかった。

キリン

 

 

世の中には様々なキリンがいる。

失恋して涙を流しながら餃子を焼いて余った皮を横断歩道に描いてある白い線の上に等間隔に並べなるべく白線の内側を通るように自動車を運転しボールを追いかけてきた子どもを正確に轢き殺し対向車が直進してくるタイミングに合わせて右折し横断歩道をゆっくりと歩く杖をついた老婆を吹き飛ばし海で釣ったタコをオフィス街のビルの窓に貼り付けて歩き動物園にいる劣等動物たちを捕獲し線路の上に並べ切断された頭から目玉だけを取り出し串焼きにしたものを桜まつりの屋台で売り稼いだ金で国家を買収し黒人をひとり残らず処刑し大統領の持つ核爆弾のスイッチを連打し海の中に沈んだ列島ではマグロが空を飛びイカがスーツを着て出勤しアナゴが大学で授業を受けヤドカリが失業してホームレスになり犬や猫や猿や熊やあらゆる動物たちは死滅したがなんとか水面に鼻先が届き呼吸できるため生き残ったのをいいことに世界を征服し月曜から日曜まで毎日酒を飲み麻雀競馬パチンコカジノなど全てのギャンブルに手を出し週末はエイとセックスしこの世の全てを手にいれたキリンや、くびのながーいキリン。

9月2日

 

 

これは日記なので当然毎日更新され、その日にあった出来事が記録されるものである。

 

9月2日

ひとりでビアガーデンに行った。田舎の小さなホテルの屋上で夏季のみ営業しているようだ。「アサヒビール」「一番搾り」などと書かれた提灯が柵と壁に無造作に張り巡らされた電気を通すコードに括りつけてあり、それと申し訳程度の月明かりだけがテーブルを照らしてくれる。提灯はビールではないのに、おかしな光景だ。客は26人、私の他にひとりで来ている中年男性がひとりいた。数少ない私が食べられる野菜のうちのひとつであるフライドポテトと、焼き鳥(おそらく鶏の腿の部分を焼いてタレに浸したもの)を注文した。注文もしていないのにビールはすぐに運ばれてきた。涼しく風もなく、夏が終わり秋の入口が見えるか見えないかという気候で、屋外で酒を飲むには最適だ。遠くの空から轟音が聞こえ、夕立かと錯覚したが、小さな火花が街の灯の隙間に打ち上がるのがぶっきらぼうな柵に取り付けられた簾の間から見えた。机の上に雑に置かれた中型犬くらいの黒いラジカセから男と女が交互にラップ調の歌を歌う趣味の悪い音楽がずっと流れている。私は負けじと単行本を開き線を引きながら読んだ。読書をするには信じられないくらい不向きな環境であったが、提灯と月の明かりだけを頼りにして頁を捲っていった。イヤホンをして歩く帰り道からは月は見えず、虫の音も聞こえなかった。既に9月3日になっている。