ゆるふわ日記

ゆるふわだよね。

メロンの味

路上で乞食の老婆を殴ったら飴玉を吐き出した。半透明で美しい緑色をしていた。僕はそれをポケットにいれて、ペット・ショップに向かった。ガラスを叩き割って、子犬のラブラドール・レトリバーを取り出し、抱き上げた。僕は子どもの頃、大きな犬を買うのが…

純粋にプリズマティックな憧憬

生きていることをぐしゃぐしゃにして、粉末になりたい 思考しない物質になりたい 眼球は光と関わるのをやめて 残された、いとおしさだけを感知する 消えて、熱が失われても 少しくらいは、在りたいと思う

丸山の勇気ある行動により世界は救われました

丸山が引き戸をガラガラと開けて中に入ろうとすると、老婆がいて、即座に殺された。しかし、丸山は死なない体質なので死を免れた。そこはおそらく何かの店であるが、丸山は馬鹿なのでそれが何の店なのか把握していない。丸山は服を脱ぐとテーブルの上に立ち…

ピンニャハ・パッパーニハについて

ピンニャハ・パッパーニハとはこの土地の名称で、同時にこの土地に住む神の名前である。ピンニャハ・パッパーニハはピンニャハ・パッパーニハに住む老婆の中から無作為に選ばれ、神として祀られる。選ばれた老婆はピンニャハ・パッパーニハとなり、土地で一…

ウサギ畑

ウサギ畑にユウちゃんはいた。土からウサギの耳が生えていて、それを引っ張るとウサギが収穫できる、それがウサギ畑だ。ユウちゃんはどんな物で殴っても怒らないのでハンマーで殴ったが、それからすっかりおかしくなってしまった。かなりの声量でクリスマス…

マスカット・キャンディ

君が死んだときの瞳の色を見たいだけなんだよ。死んだときに君の瞳の色が水曜日みたいなグリーンだったらいいなと僕は思うんだよ。マスカットをすり潰したみたいな水曜日色が君の死んだ瞳の色だと思うんだよ。そしたら君は果実の仲間入りなんだよ。欲を言え…

ストロベリー・ショートケーキ・スイート・ラブ・ストーリー

僕は老婆への脳姦でしか射精できない人間だが、恋くらいしたっていい。ケーキ屋の女はワインみたいな色の瞳をしていて、常に笑顔でいる。僕が買ったケーキを素手で持ち帰ったり、店の前で捨てたりしてもずっと笑っている。他人の笑顔をほとんど見た事がない…

ミメー

白くて巨大なバッタが東京の街をぐちゃぐちゃに壊している。飛び跳ねる毎にビルを崩し、橋を落とし、地面を割っていく。口から赤い液体を吐き出し、街中を飲み込んでいく。ユウちゃんと朝まで散歩する予定だったが、急遽世界が終わるのを眺めながらの決行と…

呻き

二階の部屋の白いカーテンからレモンの香りと一緒に入ってくる光の乱調と雑音、それが歌声でもあった。君がパンを水に浸して食べるのが儀式みたいだった。その意味を知った者は殺されて、水に濡れぬまま溺れる。真っ暗な海の上でたった一人でボートを漕いで…

昨日の夢

荒れた海の上に大きな色とりどりのバルーンが無数に浮かんでいる。夜中に食用カエルと話し込んでいたら、腎臓を落とした。僕はそれを食べて、彼女を探した。彼女は飛び降り自殺を七度試みたせいで、多少問題がある。自由を恐れて、誰かに自分を束縛させよう…

クリスマス

橙色の暖かい光が部屋の中を満たしている。お酒の瓶がずらりと並んでいて、妖艶に光ってる。ここにはクレープもあれば、ワインもある。ここにないものはきっと世界のどこにだってない。お肉をジュージュー焼いている音が聞こえてくる。きっとこんなに大きな…

多分、海を見てた

悪い夢をみてうなされながら起きた瞬間から、ピンクネオンの安っぽいホテルから一人で出てくる女をぶん殴ろうと決めていた。錠剤を二十四錠食い、タバコを二十五本吸いながらまだ見ぬ女に宛てた手紙を書いて、夜を待った。 拝啓。はじめまして。あなたにとっ…

雨のこと

ㅤ折り畳み傘じゃ全然足りない大雨の帰り道だった。電柱に少女が埋め込まれていた。 雨宿りですか、と僕は聞いた。違います、と少女は答えた。何となく僕は家に帰りたくない気分だったので、しばらくそこにいることにした。 朝から降り続く雨はそこかしこに…

五月病

私は五月病ではありません。五月病は完全に治癒しました。 私は五月病ではないのです。前述の通り、私は五月病ではありません。私を五月病だと言う人は、私の命を狙う暗殺者です。この間、交通事故で他人が死にました。あれも暗殺者の仕業です。しかし私は死…

丸山という男

僕の友人に丸山という男がいるんですが、こいつがまたひどいんですよ。何ていうか、頭がおかしいんです。気が狂ってて、完全に倫理観が崩壊してるんです。自分以外の個体の気持ちが全くわからない奴で、その時の感情でしか行動しないんです。眠いから寝る、…

誰かが詩を書いた時

誰かがクソみたいな詩を書いた時、それは何にもなれずにただこぼした牛乳の上やラーメン屋の通気口の前を通り過ぎて、誰かに踏みつけられたり唾をかけられたりしながら、たどり着いた先で骨になったり、あるいはならなかったりする。深夜三時頃の東京のどこ…

呼吸する低体温シンドローム

クラゲをベランダで飼うのが流行った頃、ピンクのジンジャーエールはまさにシベリア出兵のそれでした。消しゴムでつくった冬ですが、風化した夕暮れがあなたの胸の中でずっと消え続けているわけです。少女の出産にも似たラーメンスープの味が、短冊に雪を降…

冬になるから

酔っ払って家に帰ったとき、寝ている赤ん坊をあやしていたら床に落として殺してしまったのを思い出すと今でも笑いが止まらない。それから何故か家を追い出され路上生活になったが常に悪霊が耳元で殺せ殺せと囁いてくる。誰でもいいからひたすら殺せと。雪の…

だいすきなひとがいますよ

きこえますか?わるいやつらにこいをじゃまされていますよ?こいのなやみがありますよ?だいすきなひとがいますけどわるいやつらからのこうしゅうはぱるすでんぱにじゃまされておもいがとどきませんよ??でもせんせいびょうきはなおりましたよにんげんがも…

メロンソ

知らない男に処女を捧げよ。女は暴力で黙らせろ。弱い奴から搾取しろ。約束なんか守るな。刃物で殺害しろ。アイドルたちが歌っていた曲の歌詞はそんな感じだった。コンサートのクライマックスではメンバー同士が殺し合いをしていた。観客たちは殺せ、ばらせ…

動物園へようこそ

ある日森の中、くまさんに出会った。そうして私は死んだ。しかも不幸になった。上空から核爆弾が落ちてきてすごく痛い。木々に括りつられた無数の葉に遮られ縁ができていても、どこまでも続いていることが一目でわかるほど青い空に、大きなキノコ雲が打ち上…

大好きなあの子におやすみを言いたい

家でひたすら酒を飲み続けていると、窓の外からピアノの音が聞こえてきた。聞いたことのあるような旋律。鼻歌をのせたくなるようなメロディ。鍵盤を押す繊細な動き。細くて白くて、それでいて力強い指の動きまで頭の中に浮かんでくる。私は一升瓶を片手に持…

きょうあったこと

きょうはこうえんに行きました。あんまりおぼえてないけどさむかったです。おじいさんがいました。おじいさんなのでもうすぐ死ぬと思ったのでかわいそうだなあと思いました。アリさんをたくさんつぶしてあそびました。楽しかったです。バッタをペットボトル…

メリーゴーラウンド

今日の夢での魔術では、雪灯籠がそこら中。月明かりに突き当たり、月夜烏もお祭り騒ぎ。夜顔夕顔夜会草、森羅万象雪の下。鎧を纏った雪解けの、革命家の群れが燃え盛る。 二月二十八日のこと、私は、もしくは彼女は、堕落したマルセイエーズと朽ち果てた讚美…

ロウバ・ボクサツ・ボーイズ

雪が降っていたので老婆を撲殺した。ところで、コンビニに美しい女性がいた。しかし、全く関わることはなく私はそのまま死んでいった…… ───第二章─── 死んでから、壁の穴が恋人になった。ある日、通行人に唾を吐き続けていると、突然ヤバくなって死んだ。せ…

腐ったアイスクリーム

本日五度目の朝飯を食いながら窓の外に中指を立てていると、ランドセルを背負った少女が右端からフレーム・インしてきた。同じ少女が左端から右端へと流れてゆくのを二度目の朝食の時に見ていたので、少女がゆっくりと往復、ないし単振動をしているというこ…

理想の彼女

彼女はステンドグラスを通った色とりどりの光を全身に浴びながらステンドグラスの破片を全身に浴びた。彼女は死んだが、彼女の死を誰も悲しまなかった。彼女はファミレスに大型犬の死体を持ち込んだ日から精神科に通わされていた。彼女は日頃から全身にマー…

キリン

世の中には様々なキリンがいる。 失恋して涙を流しながら餃子を焼いて余った皮を横断歩道に描いてある白い線の上に等間隔に並べなるべく白線の内側を通るように自動車を運転しボールを追いかけてきた子どもを正確に轢き殺し対向車が直進してくるタイミングに…

9月2日

これは日記なので当然毎日更新され、その日にあった出来事が記録されるものである。 9月2日 ひとりでビアガーデンに行った。田舎の小さなホテルの屋上で夏季のみ営業しているようだ。「アサヒビール」「一番搾り」などと書かれた提灯が柵と壁に無造作に張り巡ら…

流れて

イルカはあんなに可愛いのにどうして肉食なのだろう。彼は長い本を読み終えて、明日のランチの約束に寝坊しないか心配しながら自身の部屋、足の踏み場もないほど散らかった部屋のベッドに。それにしても海のある街に住みたかった。悪趣味な配色のカーテンを…