ゆるふわ日記

ゆるふわだよね。

理想の彼女

彼女はステンドグラスを通った色とりどりの光を全身に浴びながらステンドグラスの破片を全身に浴びた。彼女は死んだが、彼女の死を誰も悲しまなかった。彼女はファミレスに大型犬の死体を持ち込んだ日から精神科に通わされていた。彼女は日頃から全身にマー…

キリン

世の中には様々なキリンがいる。 失恋して涙を流しながら餃子を焼いて余った皮を横断歩道に描いてある白い線の上に等間隔に並べなるべく白線の内側を通るように自動車を運転しボールを追いかけてきた子どもを正確に轢き殺し対向車が直進してくるタイミングに…

9月2日

これは日記なので当然毎日更新され、その日にあった出来事が記録されるものである。 9月2日 ひとりでビアガーデンに行った。田舎の小さなホテルの屋上で夏季のみ営業しているようだ。「アサヒビール」「一番搾り」などと書かれた提灯が柵と壁に無造作に張り巡ら…

流れて

イルカはあんなに可愛いのにどうして肉食なのだろう。彼は長い本を読み終えて、明日のランチの約束に寝坊しないか心配しながら自身の部屋、足の踏み場もないほど散らかった部屋のベッドに。それにしても海のある街に住みたかった。悪趣味な配色のカーテンを…

溶けて

あまーいコーヒーびしゃびしゃ白いシャツはまっくろ脳内ドミノ倒しで綺麗な貝殻太陽が反射してきらきら泥の中すいすい泳ぐ子猫が森で熊と踊る血だらけで散々浜辺をてくてく歩くなんて風景が瞼の裏に押寄せてぐらぐら君とひとりで風鈴の音が響くりんりん爆音…

八月のゆるふわ日記

杖をついた老婆が横断歩道を渡っているのが見えたので私はアクセルを限界まで踏み込んで轢き殺した。完全なる正当防衛であった。老婆は私の視界に入り、私を殺そうとするのだ。老婆の肉片は野良犬が食べるので問題ない。しかし野良犬は私の愛車にこびり付い…

花屋の小娘を撲殺しよう。透明な花瓶がそう言った。海に面した花屋にはたくさんの花が並んでいる。軒先のビニールでできた屋根がつくる影にも入りきらないくらいのたくさんの花だ。黄色いのや、紫色の、青いのや、なに色でもない色の、様々な色の花が、様々…

不味い麺を啜りながら

行きつけのラーメン屋で微塵の興味もない野球中継を眺めながら伸びきった麺を啜る。金曜の夜だ。隣に座っていた知らない髭面のおっさんが話しかけてきた。俺の食ったラーメン代、払っといてくれ。そいつはそう言ってからのそのそと店を出ていった。俺は残り…

退屈で孤独な就活日記

僕は臆病者で、劣った人種だ。誰も僕のことを相手にしないし、目も合わせない。弱い人間である僕は、できるだけ他人の目に触れない様に細々と生きることしかできない。ある日、部屋でダンスを踊っていると、見知らぬ女が殴り込んできた。どうやら部屋を間違…

ニューヨーク・ドリーム

シャボン玉が時速二百キロで射出され、爆発し、街に住む二十万の人間が死んだ。テレビのニュースでも大きく報道され、新聞の一面を飾った。「シャボン玉、爆発」次のページを開くと馬鹿げた四コマ漫画が載っていた。一コマ目で人間が死に、二コマ目で人間が死…

かわいいネコ

「死ぬから。本当に死ぬから」彼女はそう言ってから電話を切った。俺はゲーセンで三十分ほど時間を潰してから彼女の家に向かった。生きている彼女と会話するのはクソ面倒だが、どうせなら彼女の死体は見ておきたい。そうして俺は無事彼女の死体と対面すること…

食事

ゴミ溜めで寝ているおっさんがかわいく見えた。その頃の僕といったら虐殺しかすることがなかった。おっさんは毎日ゴミ溜めで寝ている。僕が住んでいるのが二丁目でおっさんが寝ているのは三丁目だ。三丁目に住む人たちがゴミを捨てるところにおっさんは寝て…

幼女は爆発せよ!

幼女が爆発して散乱した!奇跡的な体験だ!神に感謝しよう!目の前で起きたこの奇跡に!幼女は爆発しました!まっ透明な肌と生まれた時から明い色の髪!焼け焦げてまっ黒くなって!爛れて燃えて、散乱する!綺麗な目ん玉飛び出してな!かわいいワンピースも…

濡れる

重い空気、頭痛、冷気、窓のくもり、水滴。犬は犬小屋へ。暗い。うねった髪の毛。建物の中へ駆け込む者達。脳を介さず通り抜ける言葉。眠気。机に、手すりに、窓枠に掛けられた傘。床に横たわる、あるいは円筒状に詰められた何本もの、傘。溜まるもの、貼り…

面白いラジオ

あの人ったら、急に頭のネジが外れて、実況のないラジオ競馬が聴きたいとか言い出して、チャンネルはニッケイに合わしてな、それから音量をゼロにしてそんでイヤホン耳に突っ込んでしばらくは目つむって集中してたんやけど、今度はだめだとか負けたとか騒い…

食べられる野菜リスト

枝豆 スイカ メロン イチゴ ポップコーン フライドポテト ポテトチップス カボチャプリン キャベツ太郎

きみ

フォークがあって、その四つある先端のうち、いちばん右側の先端で、とうもろこしの粒をひとつずつ刺して、ひとつずつ食べるきみがある。きみといったら肉塊の、その牛だか豚だかの肉塊の、その上に乗っかってる、というかもたれてる、というかだらしなく寝…

終夜列車が降る

終夜列車が降る。透明な瓶の透明じゃない部分で惑星を叩く。雨は少しあなたを濡らした。月は路肩に落ちている。別れがあなたの口から漏れた日に。終夜列車は降った。わたしをすこしかすめて。空のずっと向こうの方から。ただ無数の悲しみを連れて。消えるこ…

割れる

月に向かって石、投げて本気で当たると思ってる。そしたらちゃんと糸かなにかが切れて落ちてくると、思ってる。 公園に、時計があった。すごく背の高い時計。その時計のどまんなかに石、投げて当たると針がちょうど一分すすんだの。それを面白がって僕、ひと…

降りそうだ

てるてる坊主を育てていたんだ。水槽の中で。でもね、死んだよ。あいつ、泳げなかったんだ。水槽の中で溺れ死んだ。たぶん呼吸ができなかったんだね。そしたらね、降ったよ。やっぱり降った。あいつのせいだよ。死んじゃえばいいのに。もう死んでるんだけど…

ゆるふわ日記です。

十二月。肌を突き刺す冷気。やる気のない太陽。ただ悪戯な風。でかい犬。首のあたりを紐で繋がれた二匹のでかい犬。金色の犬と白い犬。裸で裸足で寒くないの不思議。煙突から出て天に達して空を覆った煙。太陽の死。落ちる雨粒。傘を開く通行人。傘を開かな…

正義の完成

春を札束に変えた女は乳母車を線路に置いた。一瞬の虚構の快楽によって創造された忌わしい物体を一瞬のうちに無限の快楽へと変えるためだ。乳母車には最上の装飾を施した。花柄模様の布を取り付け、中には色とりどりの花を丁寧に置いた。絶えずいい匂いのす…

架橋の反映

海の端というか海の終に架かる橋の上を歩く二人がいた。気温は低かった。二人はおそらく恋人の契を交わしたか交わしていないかともかく至極親密な関係であろう。その日は天気がよくて星空を覆う雲というか星空に覆われる雲というかとにかくそのあたりから雫…

夏休みの島

この島の海はすべてソーダ水です。この島は毎日が水曜日だけど、ここはずっと夏休みなのでいつもお休みです。この島ではゆったりと時間が流れます。この島はすべてがまっしろです。 ある日、貝殻を集めながら白い砂浜をお散歩していると、自動販売機さんが元…

ある日のこと

きっとぼくら世界が虹色になったそんな世界でぼくら虹色になった。ある日の帰り道ぼくら帰ることをしていた。ぼくら帰ることをしていたのはただの帰り道だった。ぼくらそんな帰り道で頭の中にピアノの音を持っていた。ピアノの帰り道はそれでぼくら彩られた…

火曜の晩

火曜の晩、地獄の判事である私は神秘不可思議な衝動を神から与えられた。正しく忌むべき罪人を裁く権利を手にしたに等しい。私は神より授かりし処刑の令状を片手に火曜の晩の酒場街を見回っていた。火曜の晩にはそれが火曜の晩であるにも拘らず、炎に集う害…

信号

歩く男は青色に光っては消え光っては消えを繰り返し、暫くすると赤ワインの海へ沈んだ。目の前を秒速三十万キロの光るものに引かれて時速六十キロの光らせるものが通過した。どこかで機械の鳥が一度鳴いたきり、洞窟の出口は閉ざされた。誰かが透明な釣り糸…

冷たい夜の

夜道をひとり歩いていた。すると暗い道の端で溶けているひとりの少女がいた。 「どうかしたのか」 話しかけた。急いではいなかったためだ。 「体が溶けてしまっているの」 少女の体は溶けていた。既に腰から下は溶けてなくなっていた。うーん、と、僕は困っ…

惑星のかけら

緑のスカート揺らして 都会の人混み駆け回る スキップで地面蹴飛ばして 口笛で誤魔化した 緑のスカート濡らして 都会の路地裏寝転ぶ イヤホンで耳ふさいで 狭い空見上げた 集めたティッシュも 落としたコインも 燃やした写真も ぜんぶどうでもよくなった 耳…

夏になってしまった

暑い。 この季節になると地元で花火大会があって、毎年家の窓からそれをみる。性別の違う人と一緒に花火をみようと誘ってみたりしたこともない。窓から外を見ると目の前には僕が通っていた小学校の中庭やうさぎ小屋があって、花火大会の日はその上に大きな花…