ゆるふわ日記

ゆるふわだよね。

落花

    二本の鎖に繋がれた板が揺れると二秒前まで静止画であったその風景は筆を持って今度は私の心をカンバスへと変えてしまうが、時に荒々しく、時に静かに、しかし如何の場合でも確かに、その筆の毛の一本一本は鋭い針金に成り得るのだ。緑色の炎に焼き尽くされたそのあまりにも残酷な眺めに慈悲もなく天は致命的な一撃を落とし私は為す術もなくその場に膝から崩れ落ち心という曖昧なそれは木端微塵に吹き飛びただ時間を恨むことしかできないのだ。絶望は強靭な力を持ってして私の足を掴み決して離すことはなく少しずつ私を飲み込んでゆく。一秒たりとも戻ることはできないのだ。風は温度によって、また明るさによってその表情を変える。明るく温かい憂愁。暗くて冷たい恐怖。子供、残虐な物体。穢れを知らないもの、私の感情を蝕み破壊し冷たく錆びた鉄塊へと変えてしまう。私はこんなにも汚れてしまった。心は腐り千切れて地面に落ちる。口から醜い憎悪を吐いて音の無い号哭は誰の耳にも入らない。行き先を失った途方もない憎しみだけが頭の中で蜷局を巻いている。その蟠りは日を追うごとに大きくなり私の体長をも遥かに越える怪物と化し、私を丸呑みにした。後に残ったのは真黒に染まった怨悪のみだった。私の触れたところから鎖は錆びて朽ち果てていった。目からは液体が溢れ出る。しかしかつて透明であったはずのそれは濁り穢れを含む。時間を憎む。板に腰掛けるいつかの少女。風がそれを揺らす。少女の背中には翼が生えていて、優しく柔らかく、しかし逞しく空気を切ることができる。少女は空を飛ぶことだってできる。清く穢れの無い瞳は、時として刃物のように鋭く、私の胸の辺りを深く突き刺す。緑色の絶望は桜色の憂鬱へと変わる。花が散ったら永久に眠ろう。