読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

ゆるふわ日記

ゆるふわだよね。

食事

 

 

    ゴミ溜めで寝ているおっさんがかわいく見えた。その頃の僕といったら虐殺しかすることがなかった。おっさんは毎日ゴミ溜めで寝ている。僕が住んでいるのが二丁目でおっさんが寝ているのは三丁目だ。三丁目に住む人たちがゴミを捨てるところにおっさんは寝ている。三丁目は昼でも薄暗く、夜になると元気になるところだ。肩を出したお姉さんが歩いてる。汚い町なのに立派な車がいつも路肩にとまっている。三丁目の人たちのマナーは悪く、どんなものでもゴミ溜めに置く。ゴミを回収するお仕事の人たちもそれに対抗して、頑なにゴミを持って帰ろうとしない。そのためゴミ溜めにはソファーや冷蔵庫、テレビなどが置かれていて秘密基地のようになっている。おっさんはソファーの上で眠る。薄いけれど毛布もある。生臭いのはおそらく生ゴミのせいだ。カラスはいつもそれを狙っている。おっさんが寝るとカラスがたくさん集まってきて、辺りに散らばるパンくずや野菜の切れ端を食べる。コンビニの袋にも穴を空けて入念にチェックをする。酒場帰りの酔っ払いの吐瀉物もつつく。カラスのマナーも悪く、荒らしたものを再びゴミ溜めに戻すことをしない。そのため早朝の三丁目はいつもゴミが散らばっていて絶望的だ。おっさんはかわいい。正確に、時間通りに生きている。缶を拾って生きている。毎晩飲む麦の発泡酒のひとつだけを楽しみに生きている。半分くらい白髪になっている。髭も長くなっていてそこにも白い毛が混じっている。いつも同じジャージの様な服を着ている。冬になると穴だらけではあるがきちんと分厚いコートを羽織る様になる。おしゃれだし、かわいいのだ。僕はおっさんが大好きだった。虐殺しかすることのなかったその頃の僕は、おっさんを殺した。おっさんがカラスに食べられるところがどうしても見たくなったのだ。電柱の脇に落ちていたカラスの死骸を拾って二丁目の僕の家で唐揚げにした。その日、僕はおっさんに、新宿区歌舞伎町の方の三丁目で拾ったタバコをひと箱と、コンビニで買った缶ビールひとつとマッチ棒のひと箱、それにカラスの唐揚げを差し入れした。おっさんは喜んでいた。おっさんはかわいかった。唐揚げもすぐに平らげた。ビールの缶もすぐに空き缶になった。でもタバコは大切にちょっとずつ吸った。二本目のタバコをちょうど吸い終える頃に、僕は落ちていた鉄パイプを拾って、おっさんの頭に振り下ろした。おっさんはそのたったの一撃でピクリとも動かなくなった。幸せそうな顔して眠っていたよ。僕は少し離れたところからカラスがおっさんに食らいつくのを待った。カラスが集まってきているのはわかる。ただ僕と同じ様に離れたところから様子を伺っているだけだ。暫くすると両肩に大きな穴の空いた服をきた痩せ細った女がゴミを捨てに来たのでこいつも鉄パイプで殺した。このことについては本当に申し訳ないと思っている。夜明けが近付く。僕も焦りだす。カラスたちはおっさんの周りに散らばる生ゴミをつつくばかりでおっさんを食べようとはしない。待ちくたびれた僕はおっさんの耳を引き千切ってマッチで軽く炙ってから齧った。カラスたちに見せびらかしながら齧った。それをみたカラスたちは、僕がいるにも拘らずいっせいにおっさんの死骸に飛びかかり食べ始めた。僕は嬉しかった。おっさんはかわいかった。不思議なことにカラスたちは女の方には見向きもしなかった。カラスたちが食べやすいように僕はおっさんの皮を丁寧に剥がしていった。カラスも僕のことを仲間だと思ってくれているみたいだ。カラスはさらに集まっておっさんを食べた。おっさんはだんだんと小さくなって、分裂して、散乱して、かわいかった。僕は群がるカラスを何匹か鉄パイプで殴り殺した。二丁目の僕の家にそれを持って帰ってきて唐揚げにして食べた。生臭くて脂っぽかった。三丁目のゴミ溜めに吐いたよ。