ゆるふわ日記

ゆるふわだよね。

流れて

 

 

イルカはあんなに可愛いのにどうして肉食なのだろう。彼は長い本を読み終えて、明日のランチの約束に寝坊しないか心配しながら自身の部屋、足の踏み場もないほど散らかった部屋のベッドに。それにしても海のある街に住みたかった。悪趣味な配色のカーテンを引いて窓を押し開けると風が海の上を旅してきたぴりと冷たい空気を頬に当てて僅かに醒めつつある眠気を保ったまま再びベッドに入り、ランチの約束に寝坊しないか心配しながら眠る。夢のような生活を夢の中だけでもいいから送れないものか。鈴虫だろうか。ほのかに秋の気配を感じる。喉が渇く。お茶とコーラが冷蔵庫の中にあったはずだ。いやコーラは先ほど飲み干してしまった。仕方ない。お茶でいい。出られない。鈴虫は一匹ではない。いや他の虫もいるな。なんの虫だろう。彼はある夏の日に彼女に宛てた手紙のことを思い出していた。夏の匂いはわずかに遠く、海への空想もほのかに。夢とのあいだを揺蕩う。白い斑点が浮かぶ。緑道に女の子が立っている。今にも消えてしまいそうだ。優しく手を引いて白い森の中へと誘う。湖のほとりでそっとキスをする。地平線の彼方まで引かれた線路の上をずっと走ってゆく。やがて線路は浅い水たまりに入る。靴の中に冷たい水が入り込んでくる。水しぶきを立てながら線路の上を走ってゆく。水たまりはどんどん深くなり、透明な海になる。彼は沈む。沈みながら考える。息ができる。月が近い。屋根の上。空を飛べそう。秋が近い。目の前の文字列が歪む。磯の匂いが朝食の匂いにかわる。揺蕩う。呼吸がゆったりになって、おしまい。