ゆるふわ日記

ゆるふわだよね。

9月2日

 

 

これは日記なので当然毎日更新され、その日にあった出来事が記録されるものである。

 

9月2日

ひとりでビアガーデンに行った。田舎の小さなホテルの屋上で夏季のみ営業しているようだ。「アサヒビール」「一番搾り」などと書かれた提灯が柵と壁に無造作に張り巡らされた電気を通すコードに括りつけてあり、それと申し訳程度の月明かりだけがテーブルを照らしてくれる。提灯はビールではないのに、おかしな光景だ。客は26人、私の他にひとりで来ている中年男性がひとりいた。数少ない私が食べられる野菜のうちのひとつであるフライドポテトと、焼き鳥(おそらく鶏の腿の部分を焼いてタレに浸したもの)を注文した。注文もしていないのにビールはすぐに運ばれてきた。涼しく風もなく、夏が終わり秋の入口が見えるか見えないかという気候で、屋外で酒を飲むには最適だ。遠くの空から轟音が聞こえ、夕立かと錯覚したが、小さな火花が街の灯の隙間に打ち上がるのがぶっきらぼうな柵に取り付けられた簾の間から見えた。机の上に雑に置かれた中型犬くらいの黒いラジカセから男と女が交互にラップ調の歌を歌う趣味の悪い音楽がずっと流れている。私は負けじと単行本を開き線を引きながら読んだ。読書をするには信じられないくらい不向きな環境であったが、提灯と月の明かりだけを頼りにして頁を捲っていった。イヤホンをして歩く帰り道からは月は見えず、虫の音も聞こえなかった。既に9月3日になっている。