ゆるふわ日記

ゆるふわだよね。

メロンソ

 

 

 

知らない男に処女を捧げよ。女は暴力で黙らせろ。弱い奴から搾取しろ。約束なんか守るな。刃物で殺害しろ。アイドルたちが歌っていた曲の歌詞はそんな感じだった。コンサートのクライマックスではメンバー同士が殺し合いをしていた。観客たちは殺せ、ばらせ、殺っちまえと合いの手をいれる。アイドルたちは歌いながら殴り合い、踊りながら血を流した。生き残った女の子はナイフを隠し持っていた。血まみれの歯を見せてニヤりと笑うとそんなショーは終わった。僕は臆病だからいつだって青空のひろがりと、人々の雑踏の中に身を置きたい。生ぬるい虚無の中、他人の幸福をぼんやりと妬みながら生きていきたい。その日、夜明けしかこなかった。真夏の夜明けだけが何度も何度も繰り返された。夜明けバカヤロウと思いながら電信柱をのぼり白い紙を細かくちぎって撒いた。完全に雪だった。僕は電線を琴にしてクリスマス・ソングを奏でた。その音色は遠い遠い国まで届いた。真夏の夜明けに僕だけがクリスマス。どうしようもなくなって僕は電信柱から電波を飛ばして好きな女を呼んだ。ずっと好きな女だ。僕は臆病者なのでビール瓶で殴ることは出来なかった。だからワイングラスを投げつけた。彼女の顔は頬にひとつだけ切り傷がついて、ワインでベトベトになった。昔のおとぎ話に電信柱が出てこない。カメとかしか出てこない。また空虚の中、電信柱の上から日の出を眺めた。生卵と涙が似ているという理由から、彼女は泣く演技をする時いつも生卵を顔に打ち付ける。僕が白ワインだと思ってずっと飲んでいたのは、うっすいメロンソーダだった。殺せ、ばらせ、殺っちまえ。殺害しろ。暴力で黙らせろ。そんな言葉が頭の中でずっとぐるぐる回っていた。でも臆病な僕はひたすらワイングラスを投げつけることしかできなかった。彼女は泣いたフリして生卵をいくつも額で割った。彼女の顔はメロンソーダと生卵と血液でベトベトになってすごい臭かった。