ゆるふわ日記

ゆるふわだよね。

息止め

    マフラーで君を絞め殺して雪の下に埋めた。片方の手袋をなくしたから。雪の様にまっしろな君の美しい顔には血の一滴すら感じられなかった。それは太陽の見えない日。かじかんだ手を温めあった。長靴を履いてふたり学校へ行った。水滴のついた窓硝子につくったふたりだけの文字。その瞬間そこはたしかにわたしと君だけの空間だった。時間は確かに吹き飛んで永遠になった。雪だるまをつくった。ほっぺたをくっつけ合って冷たいって笑った。アイスを買って捨てた。君はマフラーも手袋も持っていなかった。ふたりでひとつのマフラーをして。わたしの手袋を片方はめて。手袋のない手はふたりを繋いで。君の左手とわたしの右手。幸せとは君の体温だった。きっとその時ふたりはひとつになった。その日手袋を片方なくした。君が寒くないように首にはマフラーを巻いて。左手に手袋をはめて。静かに君を雪の下に寝かせた。ふたりだけしか知らない文字を雪に書いた。ただ冬が終わるのが怖かった。