ゆるふわ日記

ゆるふわだよね。

2016-01-01から1年間の記事一覧

降りそうだ

てるてる坊主を育てていたんだ。水槽の中で。でもね、死んだよ。あいつ、泳げなかったんだ。水槽の中で溺れ死んだ。たぶん呼吸ができなかったんだね。そしたらね、降ったよ。やっぱり降った。あいつのせいだよ。死んじゃえばいいのに。もう死んでるんだけど…

ゆるふわ日記です。

十二月。肌を突き刺す冷気。やる気のない太陽。ただ悪戯な風。でかい犬。首のあたりを紐で繋がれた二匹のでかい犬。金色の犬と白い犬。裸で裸足で寒くないの不思議。煙突から出て天に達して空を覆った煙。太陽の死。落ちる雨粒。傘を開く通行人。傘を開かな…

正義の完成

春を札束に変えた女は乳母車を線路に置いた。一瞬の虚構の快楽によって創造された忌わしい物体を一瞬のうちに無限の快楽へと変えるためだ。乳母車には最上の装飾を施した。花柄模様の布を取り付け、中には色とりどりの花を丁寧に置いた。絶えずいい匂いのす…

架橋の反映

海の端というか海の終に架かる橋の上を歩く二人がいた。気温は低かった。二人はおそらく恋人の契を交わしたか交わしていないかともかく至極親密な関係であろう。その日は天気がよくて星空を覆う雲というか星空に覆われる雲というかとにかくそのあたりから雫…

夏休みの島

この島の海はすべてソーダ水です。この島は毎日が水曜日だけど、ここはずっと夏休みなのでいつもお休みです。この島ではゆったりと時間が流れます。この島はすべてがまっしろです。 ある日、貝殻を集めながら白い砂浜をお散歩していると、自動販売機さんが元…

ある日のこと

きっとぼくら世界が虹色になったそんな世界でぼくら虹色になった。ある日の帰り道ぼくら帰ることをしていた。ぼくら帰ることをしていたのはただの帰り道だった。ぼくらそんな帰り道で頭の中にピアノの音を持っていた。ピアノの帰り道はそれでぼくら彩られた…

火曜の晩

火曜の晩、地獄の判事である私は神秘不可思議な衝動を神から与えられた。正しく忌むべき罪人を裁く権利を手にしたに等しい。私は神より授かりし処刑の令状を片手に火曜の晩の酒場街を見回っていた。火曜の晩にはそれが火曜の晩であるにも拘らず、炎に集う害…

信号

歩く男は青色に光っては消え光っては消えを繰り返し、暫くすると赤ワインの海へ沈んだ。目の前を秒速三十万キロの光るものに引かれて時速六十キロの光らせるものが通過した。どこかで機械の鳥が一度鳴いたきり、洞窟の出口は閉ざされた。誰かが透明な釣り糸…

冷たい夜の

夜道をひとり歩いていた。すると暗い道の端で溶けているひとりの少女がいた。 「どうかしたのか」 話しかけた。急いではいなかったためだ。 「体が溶けてしまっているの」 少女の体は溶けていた。既に腰から下は溶けてなくなっていた。うーん、と、僕は困っ…

夏になってしまった

暑い。 この季節になると地元で花火大会があって、毎年家の窓からそれをみる。性別の違う人と一緒に花火をみようと誘ってみたりしたこともない。窓から外を見ると目の前には僕が通っていた小学校の中庭やうさぎ小屋があって、花火大会の日はその上に大きな花…

星間飛行

ツーツーやあやあ久しぶり、こんばんはどうだいそっちの様子は、暮らしはどうだい食っているかね、そっちとはこっちかい地球のことかね、まあまあこれはこれは遠くからわざわざ、だけどこっちはこんにちはだねいやおはようございますかな、なんて地球はどう…

五月は蘭淡のために

ぽかぽかというより陽射しの針が痛いこと痛いこと、すっかり木々は青々と、茂って、ああ、これは夏だなと。それは小鳥たちが恋人を呼ぶ声であったり、風が木々を奏でる音であったり、それはそれは暖かな憂鬱が。海のある街に行ってみたいとそう感じる季節に…

息止め

マフラーで君を絞め殺して雪の下に埋めた。片方の手袋をなくしたから。雪の様にまっしろな君の美しい顔には血の一滴すら感じられなかった。それは太陽の見えない日。かじかんだ手を温めあった。長靴を履いてふたり学校へ行った。水滴のついた窓硝子につくっ…

まどろみ

憂鬱な春が終わって憂鬱な夏になるのを感じる。春は失う季節だって誰かが言っていたね。生まれてからずっと春で、失うことでしか幸せになれない人のことをどうか忘れないで。夏の雲は流れると言うより泳ぐかな。だからそれは水しぶきで、夏の雨は嫌いじゃな…

落花

二本の鎖に繋がれた板が揺れると二秒前まで静止画であったその風景は筆を持って今度は私の心をカンバスへと変えてしまうが、時に荒々しく、時に静かに、しかし如何の場合でも確かに、その筆の毛の一本一本は鋭い針金に成り得るのだ。緑色の炎に焼き尽くされ…

花屋の小娘を撲殺しようと店先まで出向いた。小娘はちょうどひとりで店番をしている最中である。小娘は私に気付くと緊張と恐怖が入り混じった何とも醜い顔面をこちらに向けた。拳を固く握りその既に腫れ上がった顔面を思い切り叩いてやる。店先に甲高い絶叫…