ゆるふわ日記

ゆるふわだよね。

ウサギ畑

 

 

 

 

 

ウサギ畑にユウちゃんはいた。土からウサギの耳が生えていて、それを引っ張るとウサギが収穫できる、それがウサギ畑だ。ユウちゃんはどんな物で殴っても怒らないのでハンマーで殴ったが、それからすっかりおかしくなってしまった。かなりの声量でクリスマス・ソングを歌いながら、一年中街を徘徊するようになってしまった。そのおかげで街は一年中クリスマスになって、とてもハッピーなのだ。ユウちゃんはオクラの観察日記をつけていたが、オクラなんて育てていなかったからたまげたもんだ。わたしはユウちゃんのことを毎日観察していて、ユウちゃんのことを愛しく思っている。ユウちゃんは誰からの愛情も全く受けずに育ったくせにまだ処女で、髪も染めない。おまけに人も殴らず、人に殴られる。ユウちゃんは先日駅前でクリスマス・ソングを歌っていたら少年たちから投石を受け、血を出してしまった。それでもユウちゃんは首を吊らないから偉いのだ。わたしはユウちゃんの服を脱がせてショッピング・モールを歩かせた。ユウちゃんの傷だらけのからだが、クリスマスみたいなのだ。ユウちゃんのオクラの観察日記には、オクラの成長や、自分のことが記されている。しかし、ユウちゃんはオクラの色すらしらないのだ。オクラの色すら忘れてしまったユウちゃんは、オクラの観察日記にウサギ畑のことや、クリスマスのことばかり書くようになった。ユウちゃんには街の全てがピカピカと光って見えて、電飾に包まれているのだ。ユウちゃんは学校にも来なくなって、家族のいない家に帰るようになった。ユウちゃんは何をされてもずっと笑顔で、泣くときも笑顔だ。ユウちゃんを叩いても切っても焼いても、ずっと笑顔だ。ユウちゃんは昔ケーキ屋さんになるのが夢だった。かわいいクリスマスケーキをつくって、蝋燭を立てるのが夢だった。ユウちゃんは絵を書くのも上手で、よくオクラの絵を書いていた。でも今のユウちゃんはオクラの色すら知らない。クリスマスの日に、たくさんの雪が降った。ウサギ畑も、雪に埋もれてしまった。ユウちゃんはオクラを心配してウサギ畑の雪を掘っていた。でもユウちゃんはオクラの色をしらない。わたしはユウちゃんにガソリンをかけて燃やした。その日から街にクリスマスはこなくなった。でもそれは、わたしにもこの世界にもまったく関係ないのだ。