ゆるふわ日記

ゆるふわだよね。

大好きなあの子におやすみを言いたい

 

 

 

家でひたすら酒を飲み続けていると、窓の外からピアノの音が聞こえてきた。聞いたことのあるような旋律。鼻歌をのせたくなるようなメロディ。鍵盤を押す繊細な動き。細くて白くて、それでいて力強い指の動きまで頭の中に浮かんでくる。私は一升瓶を片手に持ったまま、誘われるように窓の外へ出た。すると眼下に美しい女性がいた。私はすぐさま発情した後、射精。一年後、めでたく出産。幸せな家庭を築き、幸福な日々を過ごしていた。毎日毎日ダラダラと生きる。部屋にいる知らない女を殴り続ける。ひたすら錠剤を砕いて吸引する。と、窓の外からピアノの旋律が聞こえてくる。美しい音色だ。私はどうしようもなく楽器を演奏したくなり、ハンマーを手にした。ベランダから飛び降り、知らない女を殴りつける。すぐさま響き渡る叫び声。これを録音し、一躍トップアーティストになった。長い下積み時代。支えてくれたのはいつも家族の存在だった。収入がなくとも夢を追わせてくれる妻。マネキンの娘。死んだ息子。思えば、私に家族などいなかった。私は気が付くと惨めなホームレスになっていた。非力なホームレスだ。女の爪を剥がすことすらできない。しかし、赤ん坊を殺すことはできた。私は商店街を歩く女が押している乳母車を全力で蹴飛ばした。すると乳児が転がり出たので助走をつけて踏みつけた。刹那、響き渡る歓声。拍手喝采の嵐。絶叫のオーケストラ。目が覚めると私は暗く生臭い独房の中にいた。鉄格子で遮られた小さな窓の外からピアノの音が延々と流れ込んでくる。不協和音のみで完成された絶望的な音色だ。常に吐き気を催し、ゲロを吐き続けた。孤独に包み込まれ、不安が途切れることはない。全身が痒く、手足は常に痺れている。私は不幸だ。私が一体何をしたと言うのか。悲しみの淵、私は幸せとは何かを考えていた。幸せとは、幸せとは、