ゆるふわ日記

ゆるふわだよね。

ミメー

 

 

 

 

白くて巨大なバッタが東京の街をぐちゃぐちゃに壊している。飛び跳ねる毎にビルを崩し、橋を落とし、地面を割っていく。口から赤い液体を吐き出し、街中を飲み込んでいく。ユウちゃんと朝まで散歩する予定だったが、急遽世界が終わるのを眺めながらの決行となった。ユウちゃんは髪も染めたことないとてもいい子だ。ユウちゃんは笑うのも怒るのも苦手で、泣くのも苦手だ。世界は終わりそうだが、キョトンとしている。ふたりでコンビニに入ってチョコレートをひとつユウちゃんのポケットに忍ばせ、半ば強引に万引きをさせた。ユウちゃんは少し悪者になった。夜は更けていくばかり。正義のヒーローは現れず、街は壊されていくばかりだ。ずっとこの街に住んでいるのに、ノスタルジアの欠片もない。人がたくさん死んでいて、血がすごい。あらゆる場所が燃えていて、やや暑い。ユウちゃんも服の胸のあたりを掴んで、パタパタしている。ふたりで思い出の校舎の屋上に向かうことにした。多分割と頑丈なのだ。私は自転車を盗んで、ユウちゃんを荷台に乗せて共犯にした。逃げなきゃだから、ということにして。通学路にしてはやや燃えすぎている道の上でペダルを漕いで、アイス食べたい、などと言う。バッタが吐いた体液が街中を赤く染めていく。ようやく校舎の屋上に着いた頃には、夜が少しだけ明けかかっていた。背の高い建造物はほぼ全てバッタに壊され、平坦な地になっていた。初めて東京の地平線を見た。太陽が少しずつ昇ってくる。真っ赤になった街はぜんぶ燃えていて、空まで赤く染めていた。それはまるで夕暮れみたいだった。未明だが。ユウちゃんは泣いていた。ユウちゃんが泣いているところを初めて見た。ユウちゃんはポケットからハンカチを取り出して涙を拭こうとしたけど、ドロドロに溶けたチョコレートがこびりついていてキモかった。世界は終わったが、ユウちゃんは笑った。